「何よそんなの、だったらあたしがあんたを幸せにしてやるわよ!!」 少女の細い指が殴り掛からんばかりの勢いで男の薄桃色のシャツを乱暴に掴む。皺になろうが、ボタンが飛ぼうがしった事ではない。細い腕のどこにそんな力があるのかと疑う程に強い力に引かれて、距離がぐっと近づいた。赤く林檎のように染まった少女の頬の熱が男にも伝染してしまうかのように接近した距離で。彼女は仇を相手にするかのように鋭く見上げていた。翡翠を思わせる深い色をした瞳が揺れる事なく冷静と情熱を湛えて注がれる。 男は答える言葉を探すようにへらりとだけ虚飾に満ちた笑みを浮かべた。 まっすぐ、君をみつめている(11.06.28) |