「フレンはずっとユーリの家族だったんですね、羨ましいです」

ぽつり。呟かれた言葉は空気に溶けた。溶けて欲しい、少女は願いながら隣を歩く騎士の顔を見上げた。黄金の髪をした太陽のような騎士は不思議そうにこちらを見ている。肩が触れる程の至近距離だ。耳に届かないわけがない。そうして、口に出した言葉はなかった事にはできない。 少女は苦笑いを一つ。

「昼間、ハンクスさんがおっしゃっていました。この下町はユーリにとって家族のようなものだと」

だから、似た言葉で意味を誤魔化す。 そうしてやると騎士は納得したように微笑んだ。瞳に馴染んだ、彼の笑み。眩しい程に黄金色に輝く笑み。

「エステリーゼ様もユーリにとっては家族のようなものですよ。彼は懐に入れた人間を簡単には放り出さない男ですから」

「だったら、嬉しいです」
ガタン。軽い音がして頭上を見上げればそこには話中の人が顔を出す。いつの間にか彼の住居の前まできていたらしい。隣には黄金の太陽が輝くのに、見上げた漆黒の星が眩く感じるのはどうしてだろう。この淡い想いを抱く自分は、漆黒の恒星に恋い焦がれる惑星のようだと少女は思った。


―――フレン知っていますか、家族と家族のようなものは絶対に違うのです。彼の隣を歩けるのは……




人はそれを×××と呼びます。(11.06.28)