現パロ妄想


奥を抉るように突き立てされたそれに、蘇芳は自然と涙目になる。視界が歪み、生理的な涙が一筋。 すっ、とその頬を流れた。くすり。男の愉快そうな笑みが耳に届く。聞きなれた、声。


「        」


声を出したくても、嘔吐くような声しか漏れず。閉じる事のできない口からは涎が零れる。赤ん坊のように。 止める事なく。流れたそれは、その胸元を色鮮やかに汚してゆく。顔は涙と涎でぐちゃぐちゃだ。 ぐえっと拉げた蛙のような鳴き声を上げ、蘇芳は抗議するように瞳に力を込める。相手は自分よりも体格がいい。 武術を嗜んでおり、デスクワーク中心な自分では腕力で叶うはずがない。希望すら持てない。

「まったくタンタン君は、本当にいい良い顔をしてアイスを食べてくれますね」

うっとり。恍惚な表情を浮かべて男はさらに手に力を込める。喉の奥にぐっと更にアイスが差し込まれた。




―――このド変態、覚えてろ!!!





R−18に挑戦しようとして飽きた


  痛い。強打した腰痛みに耐えながら、蘇芳は顔を顰めた。俯けた顔に、男の色素の薄い髪が触れる。くすぐったいと思う暇もなく、更に眉間にしわを寄せた。
「あんたさ、何するわけ!?」
 押し倒すように。否、押し倒す事前提で蘇芳に跨るように覆いかぶさった男。静蘭は綺麗に笑って見せた。ぞくり。蘇芳の背筋に悪寒が走る程に美しく、妖艶な笑み。もしこれが女性ならば、一晩と言わず金の尽きるまでお相手願いたい。そう思える程に、顔だけはいい男は美しく微笑む。
 死を宣告する、その表情で。 

「何するって、恋人同士が寝台でする事と言えば一つだけでしょう?」
「って、勝手に帯を解くなよ!!!」

 顔面が蒼白になる。視界がくらくらした。この男に常識など通用にない事は百も承知。説得など不可能。今も、さも当然とした顔で蘇芳の帯を緩めにかかる。慣れた手つきで。そう、この男は手慣れているのだ。ただでさえ、蘇芳は文官という立場にあり力でねじ伏せる事ができる。それに加えて、何度も体を重ねた事のある仲だ。同意の上でも、そうでなくても。
 だが、今は状況が違った。ここは、紅邵可邸。蘇芳の屋敷とは違う。この男が仕える主人とその愛娘が生活を共にしている場所。その上、その愛娘は蘇芳の上司とくる。ここまで条件がそろえば、自然と危険な場所は避け、普段は蘇芳の屋敷で事に運ぶのが常だというのに。
 今の静蘭にはその余裕すらないように見えた。
 綺麗に笑う顔は、仮面のようで恐ろしい。反面、脆く崩れ去りそうに感じた。勘がそう告げていた。
 衣擦れの音がやけに室に響く。しゅるりと抜き取られた帯が寝台の下に、曲線を描き放り投げられた。これ以上はやばい。蘇芳は静蘭の手を掴みにかかる。手首を抑えればいくらかは勝機が見えるはず。相手が武官だとしても、そこは同じ男。あとで酷い目に合おうが、この場さえ切り抜けられるなら隙をつくり急所を蹴り上げればいいだけの事。
 しかし、現実はそう甘くはなかった。

「…っ!!」

 掴もうとした腕に、逆に両腕を縛り上げられる。

「なんですか、タンタンくんの癖に今日は反抗的ですね」
「あんたさー、いつも、いつも、俺がいいようにされいてるとか思ってねー?」

 頭上で一纏めにされた腕が軋む。脂汗が額に滲んだ。かなり力を籠められているのか、相当痛い。苦痛に顔がゆ歪む。しかし、男はそれすら愉快だというように笑みを浮かべた。いや、愉快とは違う。微かに違和感を覚える。先ほどの勘が再び告げるのだ、これは違うと。いつもの顔とは、違う。何かが違う。

「違うんですか?」

 囁くように耳元に呟かれる。吐息がくすぐったく、蘇芳は肩を揺らす。ぞくぞくと背中を這い上がるのは悪寒か、それとも。その反応に静蘭は笑みを深め、武官にしては細く長い指で蘇芳の衣を乱した。日焼けを知らない白い肌が翡翠色の瞳に曝される。
 それだけで、蘇芳は身体の芯が熱くなる気がした。感情は否定している。だが、身体は知っているのだ。その証拠に肌蹴た衣から覗く突起が桃色に染まっていた。快楽を知るそこは自己主張するかのように、ピンッと顔を出してる。羞恥で顔が熱くなるのがわかった。
 くすり。静蘭が笑みを零す。嘲笑うかのように。蔑むかのように。酷く頬が熱を孕んだ。頬だけではない。身体全身が熱い。翡翠色の瞳がその痴態を凝視しているかと思うと、更に身体が熱に魘されるように温度を増していく。
 と、ふいに。その瞳と蘇芳の飴色をした瞳が絡み合う。
 無機質な色だった。蘇芳の熱を一瞬にして冷ましてしまうかのように、冷淡で無機質で。感情を含めない色をしていた。



「せいらっ――っ」
 

 








静タン詰め合わせ(11.11.10)